社会に出て働いている親なら「理不尽な上司や取引先」と日々つきあい、その人なりの対処法を身につけているはずです。専業主婦の方だって、お母さんどうしのつきあいの中で「仕切りたがる人」や「女王様気取りで自分の思うままにしないと気が済まない人」と日々接していることでしょう。そして「波風立てずにやり過ごす方法」をマスターしているのではないでしょうか。この処世術を子どもに伝授することは、ある意味で、とても有益です。教師の理不尽な要求を受け入れてしまいがちな女の子には「ハイハイって言っておいて、あとは放っておけばいいのよ」から、やれと言われたことは、とりあえずやっておいたら?ただ、一生懸命やることはないわよ。形だけ整えておけばいいの」まで、その人なりの方策を授けることができることでしょう。
なぜ、メーカーはこぞって方向転換したのか。口紅が落ちないなんて何もいいことばかりではないと、女性が痛感したためだ。通常の口紅の色は、摩擦や熱などで落ちやすい。ところが、落ちない口紅はメーカーが叡智を尽くして作り出しているだけに、摩擦や熱にも強い。だから、ちょっとやそっと洗っただけでは色が落ちない。そのため唇の上に残った色を取り除くには通常のクレンジングではなく、落ちない口紅用に作られた専用のクレンジングが必要となる。化粧直しの手間がいらず、色持ちが良くて便利なはずなのに、落とすときには余分な手間とお金をかけなくてはならない。また、この頃から急速に高まり始めた自然志向(自然な素材を使った化粧品を使いたいという志向)の影響も大きかった。色が唇にいつまでたってもへばりついているのが不自然なら、その色を落とすために専用クレンジングを使うのも不自然。何より唇に負担がかかる。それならば、落ちる口紅の方がましだと多くの女性は考え始めた。女性の関心は、ぷるぷるふっくらした唇へと向かっていく。業界の新たなキーワードは「潤う」「光る」「輝く」。90年代後半から女性の唇は、つやつやとテカリ始めていった。
現代、およそ八割の人が病院・診療所で死ぬ。その他老人ホームなどの施設で死ぬ人もおり、自宅で死ぬ人の割合は一三パーセント(二〇〇三年)と、昔に比べ少なくなった。病院で死ぬとどうなるか。まず、点滴などの器具が看護師によってとりはずされる。次に、湯のみ茶碗に入った水を綿棒に含ませ、故人の唇を潤すということをする。これを「末期の水」、あるいは「死水」という。元来は、「生き返ってほしい」との願いを込めて、死にゆく人に行われた習慣だったが、それが現代では死亡直後、死者となった人に、その事実を確認し、別れを告げるものとして象徴的に行われている。よくマナーの本などに、末期の水をとる遺族内の順番について書いてあるのを見かけるが、私は「ふざけるな」といいたい。マナーの本などに頼って「血縁の深い順に」などと考える時点で、死というものをよくわかってないといえる。死というのはもっと圧倒的にリアルなものである。